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3Dプリンターでレバーレスコントローラー自作への道:Adventurer 3での試作と限界
大型筐体出力の壁と、次世代機「P2S Combo」への決断

3Dプリンターでレバーレスコントローラー自作への道:Adventurer 3での試作と限界

レバーレスコントローラー自作の動機と第一歩

セールでSF6を購入してプレイし始めて、とりあえずは Xbox Elite ワイヤレス コントローラー シリーズ 2を使用していた。しかし、せっかく格ゲーをプレイするなら専用デバイスも使ってみたいと思うように。そこで目をつけたのが、近年プロシーンでも主流となりつつある「レバーレスコントローラー」だ。

当初は市販品の購入や、アクリルケースを業者に発注するセミオーダーも検討した。だが、ここでガジェットオタクとしての血が騒ぐ。部屋の片隅で埃を被りつつある3Dプリンター「Adventurer 3」を活用すれば、筐体設計からボタン配置まで、完全に自分の手に馴染む「究極のワンオフ機」を生み出せるのではないか。

スペックシートの数字だけでは測れない「実際の使い勝手」を追求できるのが、完全自作最大の醍醐味。筐体の厚み、ボタン間のミリ単位のクリアランス、パームレストの角度まで、すべてを掌握できる。とはいえ、市販品やセミオーダーと比較すると、圧倒的な手間と試行錯誤が要求されるのも事実だ。以下に、導入前に検討した比較表をまとめておく。

アプローチメリットデメリット(懸念点)コスト感
市販レバーレス購入即座に使える、品質が安定、保証ありボタン配置の微調整不可、デザインが画一的約3万〜5万円
アクリル業者発注ある程度の自由度、仕上がりが美しい設計図の作成難易度高、修正のたびに費用発生約2万〜4万円
3Dプリンター完全自作ミリ単位のレイアウト調整可能、修正コストが安い膨大なトライ&エラー、出力環境に依存約1万〜2万円 (※プリンター代除く)

この比較から明らかなように、自作は「時間と労力」を対価に「無限のカスタマイズ性」を得る選択。こうして、茨の道とも言える壮大なDIYプロジェクトが幕を開けた。

Adventurer 3での試作と「150mmの壁」

レバーレスコントローラーを膝置きで安定させるには、最低でも幅300mm、奥行き200mm程度のフットプリントが必要になる。しかし、ここで最初の物理的な壁が立ちはだかった。愛機Adventurer 3の最大造形サイズは150 × 150 × 150 mm。どう足掻いても、理想の筐体を一括で出力することは不可能なのだ。

この制約を回避すべく、CADソフト上で筐体を十字に4分割する設計アプローチを採用。画面上の3Dモデルでは、各パーツがパズルのように完璧に組み合わさる美しいデータが完成した。分割面にはダボ継ぎのような接合機構を設け、理論上は1つの堅牢なコントローラーとして機能するはずだった。

だが、これはあくまで「机上の空論」に過ぎない。この時点では「分割さえすればどんな大型デバイスでも作れる」と高を括っていたが、実際の3Dプリントにおける熱収縮や素材(PLA/PETG)の特性を完全に甘く見ていた。設計データと物理的な出力結果の間には、後戻りできないほどの残酷な隔たりが存在していたのである。

プリントの長時間化と熱収縮による寸法の歪み

完成した設計データをスライサーソフトに放り込み、プリントを開始した直後から、想像を絶する過酷な現実が牙を剥く。筐体を4分割したとはいえ、各パーツはビルドプレートの限界サイズギリギリ。たった1つのパーツを出力するだけで、なんと8時間以上もの途方もない時間を要求されたのだ。

4つのパーツを揃えるだけで数日が溶け、もし設計に1ミリでもミスがあれば、再び数日間のプリント待ちという地獄のループ。これでは開発のイテレーションを回すどころか、モチベーションの維持すら危うい。さらに致命的だったのが、積層時の微細な熱収縮による「歪みの累積」だ。

数日かけて出力した4パーツをいざ組み合わせようとすると、重篤な寸法公差のズレが生じており、接合部には数ミリ単位の隙間や段差が発生。最終的には構造的剛性を保つため、ダクトテープで裏側から無理やり仮固定するという惨状に。到底、激しいコマンド入力に耐えうるクオリティとは呼べず、不格好で貧弱なプロトタイプが出来上がるのみだった。

老朽化による造形失敗とスパゲッティ化の悪夢

過酷な出力環境に追い打ちをかけたのが、機器自体の深刻な老朽化である。総稼働時間2000時間を超える私のAdventurer 3は、ノズル温度の挙動が不安定になり、エクストルーダーの送り出し精度も明らかに低下していた。

特に、ビルドプレートの端ギリギリまで使う大型出力においては、熱収縮によるベッドからの剥がれや反りが頻発。アーケードボタンをはめ込むためのシビアな円孔周辺では、積層間の密着力低下やブリッジ部分の支持力不足により、樹脂の垂れ下がりや積層ズレといった致命的なエラーが顕著に現れるようになった。

1パーツに8時間かかるため、どうしても就寝中に稼働させる「夜間プリント」に頼らざるを得ない。しかし、翌朝期待を胸にプリンターを覗き込むと、そこには完成品ではなく、無惨に絡み合ったプラスチックの塊(スパゲッティ)が大量に生成されている絶望的な光景。セットアップの手間やメンテナンスの頻度を考えると、もはや旧世代機での運用は限界に達していた。

新旧3Dプリンターの開発環境比較と買い替えの決断

度重なる造形失敗と、失われた膨大な時間を天秤にかけ、Adventurer 3での大型筐体製作からは撤退を決意した。今後もレバーレスコントローラーのブラッシュアップや、より高度なガジェット製作に挑むためには、開発環境の根本的な刷新が不可避。そこで白羽の矢を立てたのが、Bambu Labの最新高速密閉型3Dプリンター「P2S Combo」だ。

以下の比較表を見てほしい。造形サイズの大幅な拡大により、従来の脆い4分割設計を過去のものとし、より強固な設計アプローチが可能になる。さらに、圧倒的なプリント速度とAIによる失敗検出機能は、旧世代機で抱えていた「時間的コスト」と「精神的ストレス」を完全に払拭してくれるスペックを備えている。

評価項目旧環境(Adventurer 3)新環境(P2S Combo)実運用におけるメリット・デメリット
最大造形サイズ150 × 150 × 150 mm256 × 256 × 256 mm【メリット】分割数の削減による剛性アップ。
【デメリット】設置スペースの確保が必要。
筐体分割設計4分割(歪み・強度低下大)2分割(強度向上・モジュール化可能)【メリット】接合部のズレが激減し、仕上がりが格段に向上。
プリント速度低速(単一パーツに8時間以上)最大 600 mm/s(同サイズで約2時間)【メリット】圧倒的な時短でイテレーションが高速化。
失敗検出機能なし(造形失敗が頻発)AI搭載Fail検出(スパゲッティ検出等)【メリット】夜間プリントの安心感。
【デメリット】カメラの誤検知が稀に発生。

この劇的な環境変化により、セットアップの煩雑さから解放され、本来の目的である「理想のコントローラー作り」に全振りできる土台が整ったというわけだ。

次世代機での新たな設計と1号機の先行公開

P2S Comboの導入により、256 × 256 × 256 mmという広大なビルドボリュームを手に入れた結果、筐体の設計思想を根本から覆すことができた。従来の歪みやすく脆い4分割設計を完全に捨て去り、プリント時の変形リスクを最小限に抑えつつ、十分な接合剛性を確保できる左右2分割構造へと進化を遂げたのだ。

さらに特筆すべきは、将来的なボタンレイアウトの変更を見据えたモジュール設計の採用である。天板のボタン配置部をメインフレームから物理的に分離し、独立したインセットモジュールとして組み込む構造を取り入れた。これにより、ミリ単位でボタン配置を微調整したい場合でも、中央の小さな天板パーツを出力し直すだけで済む。競合する市販品には真似できない、極めて高いメンテナンス性と拡張性を実現した。

今回は自作を決意した経緯と、旧環境での血の滲むような苦労を中心にお届けした。次回以降の記事では、いよいよこのP2S Comboを駆使して組み上げた「1号機」の詳細なスペックや、Raspberry Pi Picoを用いたシビアな配線作業の裏側に迫っていく。まずは、苦難の末に形となった1号機の勇姿を先行してご覧いただきたい。

自作の第一歩は環境の限界を知ることから

究極のレバーレスコントローラーを求める情熱は、愛機Adventurer 3の物理的制約と老朽化という残酷な現実の前に一度は頓挫した。しかし、この挫折こそが最新鋭機「P2S Combo」導入の引き金となり、より高度な設計と快適なモノづくりへの扉を開いたのだ。次回は、新環境で生み出された1号機の詳細な製作プロセスと実際の使い勝手に鋭く切り込んでいく。

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